ディスクトップ型PCR装置

1.はじめに

 アプライドバイオ社のStepOneプラスの場合を例に簡単に説明します。この装置はいくつかの測定モードがあります。標準のモードの場合、各測定サンプルと共にネガコン、5水準程度の濃度を振った標準サンプルをそれぞれ3~4ウエルに分けて測定します。
実際には装置の取説を見て確認しながら行ってください。
 ここでお示しする手順は一つの例であって研究室によってそれぞれの思いでそれぞれの方法で行っていると思います。測定対象によっても異なる可能性がありますのでご承知頂いたうえでお読みください

2.準備するもの

準備する材料等は以下です
・PCR試薬
・96穴プレート
・96穴プレートの台
・プレートの蓋
・ピペッター(10, 20, 100uL)
・各ピペッター用先端チップ
・500uLチューブ(測定サンプル数+6ヶ分)
・チューブ立て

事前に以下のことを決めておく必要があります。

  • 繰り返し回数(ここでは3)
  • 標準サンプル数(ここでは5)
  • 試薬に対するサンプルの比率(ここでは9:1)
  • 1ウエル当たりの試薬+サンプルの量(ここでは15uL)

注意点ですが、PCR試薬とサンプルは使用する時以外は冷蔵しておく必要があります。私は発泡スチロールの箱に保冷剤と共にこれらを入れて机の横に置いています。
机の上はコンタミを防ぐため、次亜塩素酸水とアルコールで良く拭いたうえで始めてください。

3.手順

 次の手順で測定用プレートの準備を行います。ここではStepOneのデフォルトの(12列ある横方法に並べていく)セット方法に従った手順になります。

a. 500uLチューブ(測定サンプル+6)とPCR試薬を「(測定サンプル+6)*3」回分用意する。

 下にサンプル14ヶの時の写真を示します。ミスを防ぐためにサンプルの並びとチューブの並びは関連させておいた方がbetterです。下の写真ではサンプルを5列に並べているのでチューブも5ヶづつおいています。StepOneのデフォルトでは最初にネガコンを入れることになるので、左上に純水を置いています。

b. PCR試薬3回分を500uLチューブに分注する(1チューブ当たり45uL)

チューブは机の上に寝させて置いても液は漏れませんので、いつもこの方法を行っています。

 この方法だと試薬が常温になるので劣化するのではないかと心配になるかもしれませんが、次の理由で大丈夫だと考えています。①最近のPCR試薬はこの程度で劣化しないものが多い(KAPA3GPlantではほとんど影響なし)、②若干劣化によるバラツキが発生したとしても環境DNA測定の場合前工程のバラツキの方がけた違いに大きい。ただ心配な方は氷上で行って頂ければ劣化に関しては安全だとお思います。一方で氷上で行うと結露の問題が発生し、これに対処しながら進める必要性が出てきます。

c. 上記各チューブに純水(ネガコン用1ヶ)測定サンプル、標準サンプル(鋳型;5ヶ)を5uLづつ投入する。

 ここで500uLチューブに混ぜたサンプルは1段上にずらします。こうすると途中で話しかけられたりした時に、どこまでサンプルを入れたかが分かり、チューブとサンプルを関連付けて置いているのと合わせてミスを減らすことになります。
 サンプルを投入したチューブは右写真のように3ヶ飛ばしでセットし、2行目(B行)は2ヶ目から入れていきます。こうすることで次のボルテックス時に隣のチューブが引っかかって落ちるリスクを減らしています。右の写真は標準サンプル(写真には写っていない)だけ残っている状態。

ここでも劣化が心配な方は氷上で行ってください。

d. 全て投入が終わったら各チューブをボルテックスで1秒程度攪拌する

 この時各チューブの位置を間違いないように元の位置に戻してください。

e. ピペッターで各チューブから15uLづつ96穴プレートの3つのウエルに試料を分注

 一番上の行の左(A1)から順に右に進みながら3ウエルづつ分注していきます。


f. このウエルに蓋をしてプレートの準備完了です。


 プレート上の試料の位置はStepOneのPCを立ち上げると、どの位置にネガコンと標準サンプルを入れるかが表示されますので今回これに合わせて試料をプレートの各ウエル位置を決めました。

 g. プレートが準備できれば、StepOneコントロール用のPCを操作し(主には)以下の内容をインプットして測定を開始します。
・サンプル数
・標準サンプル数
・標準サンプルの最大濃度と希釈率
・繰り返し数
(以上を入力すると上記のサンプル位置が示されます)
・プローブの種類
・クエンチャーの種類
・変性の温度と時間
・アニール・伸長の温度と時間
・サイクル数
・測定結果を保存するファイル名

手順が多くて慣れるまでは大変ですが、1度に上記の条件で26サンプルが測定できるので、サンプル数が多い時は便利です。