1.はじめに
環境DNA学会が作成したマニュアルにはキアゲン(Qiagen)社の抽出キットを使用して環境DNAを抽出する方法が記載されていますが、ある程度のスキルが必要で慣れないとなかなか大変です。また手順が多く慣れても90分程度かかります(この手順はこちらを参照ください)。一方でゴーフォトン社が慣れれば5分以内で終わると言う簡単な方法を開発していますのでここで紹介します。感度についてはいろいろな条件で調査中ですが、これまでの実験結果からほぼ同等という印象で、必要機材も少ないので私のお気に入りの方法です。
この方法は最近論文化されました。
Hideyuki Doi et al., On-site environmental DNA detection of species using ultra-rapid mobile PCR, Molecular Ecology Resources 2021
2.準備するもの
処理を行うにあたって必要な主な機器は以下です。
・カネカ簡易DNA抽出キット Version 2
・1000uL、100uLのピペッター及びその先端チップ
・1.5mL チューブ(DNA 低吸;ザルスタット社等)
・1.5mL⽤チューブラック
・遠心機(ビリュー式遠心機が便利です)
抽出キット内に二つ試薬が入っていて、右がA液、左がB液です。
3.手順
以下の手順で抽出を行います。イラストも参照しながら読んでください。
1. A液500uLをピペッターでステリベクスに充填
2. ステリベクスを1分間手でシェイク
この時ステリベクスは水平にしすこしづつ回転させる
3. 遠心してステリベクスの入口側から液を1.5mLチューブに取り出す
4. このチューブにB液を70uL投入し攪拌し抽出完了です
動画にもしていますのでご参照ください。
4.参考情報
この原理はHot-Shot(アルカリ法?)という手法がベースになっていると思われ、勝手にHS抽出法と書かせて頂きました。2液中A液がアルカリ性の溶液で細胞を分解しDNAをとりだし、B液で中和するというものだと想像しています。
従ってキアゲン抽出法のように精製の工程がないため、不純物(夾雑物)が多く残っており、この後のPCRの工程で使用するPCR増幅試薬に夾雑物に弱いものを選ぶと増幅しない可能性があります。これまでの実験結果ではKAPA 3G Plantを使用すれば増幅しなかった事はありません。