キアゲン抽出法と簡易抽出法の効率比較(2)

 環境DNA学会のマニュアルにあるキアゲン抽出法(学会法)とこのサイトで紹介している簡易抽出法の比較は、効率比較(1)で簡単な効率比較の例を紹介しました。内容はコイのいる池の水をもちいて二つの方法で抽出し、増幅曲線からCt値を比較し簡易法の方がCt値は小さかった(つまり効率が良かった)と言う結果でした。ここではもう少し突っ込んだ比較を行いましたので紹介します。

 今回は環境DNAを模した溶液(内標と呼ぶ;注1)を準備し、環境水に検出限界付近の内標を添加(スパイクと呼ぶ)してどちらがどれだけ検出できるかを比較しました。

 注1)海水魚の肉を粉砕し純水に溶かし、大きな固まりを除く目的で10uM程度のフィルタで濾過したもの。

方法は以下です。
サンプル:規格化した各濃度の内標を環境水400mLにスパイクしたもの。環境水は相模川と霞ヶ浦で10月ごろ採水。
 
フィルタリング:各濃度のサンプルをステリベクスで100mLづつ濾過、つまり各濃度4本。ここで採水~フィルタリングはその日のうちに行い、ステリベクスはすぐに冷凍。

抽出:学会法と簡易法でそれぞれ2本づつ抽出。

PCR:ディスクトップ型装置(StepOne)と携帯型PCR装置(PCR1100)でそれぞれ3回繰り返し増幅。ここでPCR試薬はKAPA3G Plantを使用。

つまり各抽出法は各濃度で
2(濾過数)×2(環境水数)×2(装置数)×3(繰り返し)=24回のPCR結果を出し検出された回数を見ました。

 結果は次のグラフに示すように簡易法の方が若干検出回数は多い、つまり感度に於いて簡易法は学会法に劣ることはないという結果がでました。

環境DNAの抽出効率比較
環境DNA測定に於ける抽出方法の効率比較

 この結果について効率比較(1)の結果から、始める前はこういう結果も想定はしていましたが、先入観として「学会法は神様」のようなものが心のどこかにありましたので、正直なところ私も少し驚きました。