水中の環境DNAは魚類その他水中で生きる生物(場合によっては陸上生物)から出たDNAと言うことは分かっていますが、果たしてその生物のどこの部分から出たDNAなのでしょうか。

 例えば魚類の場合、一般には糞、ウロコ、体液、精液・卵、死体がある場合は体全体等と言われています。

 この中で通常の生息状態では糞が環境DNAの主な発生源であるとよく言われます。
では糞に含まれるDNAは体のどこの細胞から出たものでしょうか。

 この疑問に対する回答に関して「非侵襲的試料を用いたDNA分析(著者;井上英治先生)」と言う文献が参考になります。これは哺乳類の糞のDNAから生態を研究した論文の総説ですが、他にも参考になることが多く書いてあります。

 この中で「動物のDNAは糞の表面に多い」ということからDNAは腸管細胞が糞に付着したものと言うのがこの分野で定説になっているようです。

 魚類と哺乳類とで違いがあるのかもしれませんが、おそらく魚類も腸管細胞からと考えていいのではないでしょうか。

 DNAが体のどの細胞から来たものかについてはあまり重視する必要がないのかもしれませんが、生態サンプルからDNAを抽出する場合、厳密にいえば部位によって抽出条件が変わると聞いたことがあります。
言い換えると部位が変わると同一の抽出条件でも抽出効率が変わる可能性があると言うことです。

 豆知識として頭に入れておくと何かの時に役に立つかもしれません。