ローター

 学会のマニュアルにあるキアゲン社キットを使った抽出工程において、56℃-30分処理ではミニローテーターを使ってステリベクスを回転することになっていますが、私は恒温槽内にステリベクスを置いて、5分おきに少し振りながら回転させています。さらに言うと約56℃にコントロールしたお湯にステリベクスをポリパックに入れて浸しても構いません。
 その理由は、ミニローテーターを使用しなくてもPCR時のCt値は悪くならなかったためです。
 以下はその時のデータです。

実験方法は
 魚Aをすりつぶし、これを純水に溶かした溶液の濾液をある湖の水にスパイク(少しだけ加えること)した後、学会のマニュアルに従って抽出・PCRを行ったものです。ここでPro-Kを入れた56℃の処理時、ローターを使用したものと使用しなかったものを比較しました。結果は次のグラフの通りです。

キアゲン抽出においてPro-Kアニール時のローターの有無での増幅の差

 さすがに実験ミスかと思い、再度別のサンプルで行いましたが、同様の傾向を示しました。スパイクした溶液に入っている魚AのDNAは環境DNAよりも定性的にみて抽出されにくいと考えられます。その魚AのDNAがローター無しで、より抽出されているのでローターなしで良いとの考えています。

 もし逆の実験結果が出た場合は環境DNA検出技術向上に役立つと思いますのでコンタクト下さい。

 追記1
 ステリベクスの軸を含んだ断面をみるとハウジングは台形になっています。
 学会のマニュアルが参照している手順ビデオではステリベクスを水平なロールに置いて回しています。https://sites.google.com/site/masakimiyalab/publications-1
この場合回転中のハウジング下面は常に水平になり、液は均一に広がるはずです。
 一方ミニローテーターを使用すると台形の広がった方に抽出液が溜まることになります。更に言うと軸を少しずらしてセットすると抽出液は偏ります。このあたりがローテータの欠点ではないかと想像しています。

 追記2
 その後のいろいろな実験でフィルタに付着した沈殿物(チューブに取り出した後沈殿するもの)に多くのeDNAが存在することが分かりました。特に池の水等濁ったみずにおいて顕著でした。私の行った「恒温槽内にステリベクスを置いて、5分おきに回転させる」という手順で少しステリべクスを左右に振りながら回転させているのでこの時沈殿物が多く取れていたのかもしれないと最近思っています。